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▲「絵でも、形でも魅する作品をつくりたい」と情熱を燃やす加藤さん=土岐市下石町で |
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赤茶けた陶器の表面に月が光り、風になびく麦が金色に染まる。金粉や銀粉をにかわに混ぜ、焼き上げた器に彩色する金彩の技法を駆使し、器に華やかな世界を再現。自らの作品を「彩華錦(いろどりはなにしき)」と名付けた。「金糸、銀糸をまとったような、雅(みやび)な華やかさを器に表現したい」と話す。
絵付け師の家に生まれ跡を継いだが、「形として残るものをつくりたい」と二十年ほど前に陶芸家に転身した。初めは年に一度ほどしか窯を焼くことができなかったというが、試行錯誤を重ね、日展など数々の公募展に入選を重ねた。「この道で間違っていなかったんだ、と自信がつきました」と振り返る。
今年四月の美濃陶芸展で奨励賞を受賞した作品「悠蹟」は金彩を一切使わず、造形美だけを追及している。「皿や陶板に金彩を施すのとは違い、造形美と色彩美を融合するのは難しい」と、個展では彩華錦の作品、公募展では造形を意識したもの、と作風を使い分けている。「いずれは、形でも、絵でも両方で魅する作品をつくりたい。どうすればいいかはまだ分からないが、きっと何かがあるはず。欲が深いのかも知れませんが」と情熱を燃やす。
「美濃の焼き物には色絵付けの歴史がない。絵付け師の家に生まれたからには、色絵で美濃に一旗揚げてやろうという気持ちが強い」と加藤さん。「作品を一目見ただけで『これは保幸の作品だ』と言われるようになるまで、頑張りたい」(小西数紀)