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▲個性的な造形と装飾に工夫を凝らした「彩文の器」シリーズの作品を前にする安藤工さん＝多治見市の仙太郎窯

　「美濃に生まれ、美濃の風土に育ち、美濃の先人の教えを受け継いで桃山陶の創作にあたっている」と自らの創作の原点を語る。
　まず「素材を大切にする」ことから始まる。例えば土。志野にあった土、織部にあった土は、それぞれ異なる。志野であれば「ひいろ」が鮮やかに表れ、削った時に表情が残る土でなければならない。そんな土を求めて、山を歩き回る。今使っているのは、可児市で見つけた「もぐさ土」だ。

　焼くのは、可児市柿下にある穴窯。六昼夜、まきをくべ続ける。土、火…。すべて、自然のままだ。相手は大きい。いかに自分のものにしていくか。挑戦は続く。焼く作業は、思いを注いでいく工程でもある。依頼主の顔、手を思い浮かべながらまきをくべる。「焼きは、心の問題。その課程が何より大切だ」と力を込める。

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　現在の仙太郎窯の四代目として安藤日出武さん（県重要無形文化財）の長男として多治見市市之倉町に生まれる。多治見工業高校二年の時に日展に出品されていた加藤卓男さん（後に人間国宝）のラスター彩の大皿を見て、焼き物の持つ芸術性に感動し、陶芸家を志す。瀬戸の陶芸家の下で六年間修業し、彫刻的な作品などさまざまな陶芸の道を探ったが、病気で半年間入退院を繰り返した。

　自らの道を見つける転機となったのが、加藤孝造さん（県重要無形文化財）に誘われたアンコールワットなど東南アジアの遺跡などを回り焼き物を学ぶ旅行。孝造さんから言われた言葉が心に響いた。「窯元に生まれたことを見つめ直し、美濃の焼き物を追究するのも一つの道だぞ」。一九九四年、二十五歳のころだ。

　それまで、志野は、男性的な豪快なイメージを持っていたという。孝造さんの作品から、その繊細さ、一つ一つの作業工程の持つ意味、何より、心の持ち方の大切さに気付いた。志野の茶わんは、心の作品でもある。

　一方、公募展では、個性的な造形と、金、銀彩などの装飾に工夫を凝らした「彩文の器」シリーズを発表、注目を集めている。二〇〇二年には「灰釉（はいゆう）彩文器」が美濃陶芸作品永年保存に指定された。

　〇四年の美濃陶芸展では、黒い釉薬の上に赤、金、銀で加飾し、細かいひび割れのようなかいらぎにより、土の持つ力強さを表現した「彩文の器」が、美濃陶芸大賞に輝いた。伝統的な釉薬を使いながら、勢いあるデザインで現代的な作品に仕上げたことが評価された。名古屋市で開催中の第三十八回日展東海展でも、入選を果たしており「美濃の原点を忘れず、全国レベルの作品づくりに挑戦したい」と話している。（妹尾浩和）