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▲「聖なる山」を手に、「たたずまいのある作品を作りたい」と話す若尾圭介さん＝多治見市住吉町で

多治見市街を一望する虎渓公園の近く、緑に包まれた虎渓窯。志野や織部など伝統的な美濃焼の器が並べられた部屋の片隅に、それらとは異質なオブジェが置かれていた。
　土の風合いを生かした素朴で静謐（せいひつ）な焼き締め。力強い。曲線のラインは外側から内側へ、内側から外側へと自在に巡る。メビウスの輪のように。静かな土の塊が、動を内在しているかのようだ。「他の素材と違って、陶は常に内側を意識させられる。表と裏、外側と内側は同質。通じているんです」

　二〇〇三年度、「巡」が美濃陶芸大賞を受賞し、永年保存作品に。国際陶磁器展美濃０２、朝日陶芸展などで入選を数える。〇五年に日本陶芸展に出品した「聖なる山」は、ろくろで成形した二本の筒をＸ字状に重ね、外側を肉付けした。「方法論から入った」という意欲的な作品だ。

　虎渓道場を主宰する陶芸家で父の昌宏さん（６４）から、家業を継いでみないか、ともちかけられたのは高校二年の時。だが、進んだ筑波大・大学院で学んだのは彫刻だった。陶芸コースはあったが、希望者が多くあぶれた。土に本格的に向き合ったのは、二十六歳で帰郷してから。注文の器作りや体験道場での指導の傍ら、作家として土を素材にオブジェに挑むのは、学生時代、彫刻を学んだ身にとって必然だったのかもしれない。

　土について、こんなふうに表現する。「土は繊細でわがまま。ほっておいても、構い過ぎてもダメ。姫についている爺（じい）になれ、ですよ」。相手の機嫌をうかがいながら、いつしか自分が望む形にもっていく。自然が長年かけて作り出した土と向き合うには、こちらも老練な技と根気が必要なのだ。そう実感している。

　今後が期待されるが、もうひとつ、作品にインパクトを求める声もある。「進んでいる方向が正しいか、揺れまくっている」。土の魅力にたがわぬ造形とは何か−。若尾オリジナルに向け、模索の途上だ