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200942月12日更新
風ぐるま
むなしい想像
歴史に残るオバマ米新大統領の就任式から一夜明けた二十二日の本紙特報面で、一枚の写真が目に留まった。
戦没者が眠るワシントン・アーリントン国立墓地の墓石の前で、一人の女性がうつぶせで体を投げ出し、両手で顔を覆っている。墓石には「JAMES REGAN」の名。写真説明に「2007年5月 婚約者をイラクで亡くし泣き続ける女性」とあった。
四千人以上といわれるイラク米兵死者。そしてイラクでは、十万人とも十五万人とも言われる国民が犠牲になった。犠牲者の数だけ、この写真と同じ悲劇がある。むなしい想像だが、二〇〇〇年の米大統領選で、もしブッシュ氏でなくゴア氏が当選していたら−と思う。史上まれにみる大接戦だった同選挙。ほんのわずかの票差が、その後の世界を大きく変えてしまった。
オバマ氏にバトンタッチしたブッシュ氏は、悪評を浴びながらも、夫人とともに無事、故郷のテキサスへ専用機で帰っていった。だが、犠牲となった人々は決して戻ってはこない。(有賀(あるが)博幸)
この記事は「中日新聞多治見支局」のご協力を得て掲載しています
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