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焼物百科
2007�35月30日更新
染付細密画 加藤五輔
史 2007年5月30日東濃版
染付双虎図花
▲染付双虎図花

 超人的な技術を神業と言う。近代陶磁の中にもこの神業と呼ぶにふさわしい特長を持った作品が存在しており、明治前期にみられる、驚くほど緻密(ちみつ)な絵付け技術もその一つだ。不幸にも比較的最近まで、これらは技術偏重のそしりを受けていた。優品の多くが輸出されていて、国内で全体像をつかむことが困難だったことなどに起因するものであり、もちろん現在では、そのクオリティーに足る正当な評価が与えられている。
 加藤五輔(一八三七-一九一五年)は名工として誉れ高く、多治見の市之倉にあった五輔の窯は、染め付けの細密画という、髪の毛よりも細い線を多用した絵付けを得意としていた。曲面をなす磁器の素地に描いていくのであるから、並大抵のことではないが、その絵をみると、動物も植物も、繊細な筆致によって生き生きとした表情に仕上がっている。

 むろん海外での評価が高く、明治九(一八七六)年にフィラデルフィア万国博覧会に出品された作品は、現在、イギリス屈指の名門、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に収蔵されている。また、同十一(一八七八)年のパリ万博では銅賞を受けて、その地位を確固たるものとした。当時はジャポニスムの全盛期であり、細やかな絵付けをみた欧米人たちの感嘆の声が聞こえてきそうである。

 さらに明治二十六(一八九三)年のシカゴ万博で銅賞を受けた一対の花鳥を描いた花瓶は、東京と京都の国立博物館にそれぞれ収められている。こうした花瓶は花を生けるためのものでなく、屏風(びょうぶ)のごとく一対をなして、暖炉の両脇などに飾られていたのだ。

 瑞浪陶磁資料館蔵の「染付双虎図花瓶」は、二頭の虎を毛並みの一本一本まで繊細に表現している。さらに、静と動の表情を描き分けるなど、藍(あい)一色の細密画が生み出すリアリティーの世界に魅入ってしまう逸品である。

 五輔は原料の研究にも熱心で、染め付けを描くための呉須は半年間もすって使い、その作り方は家族にも教えなかったという。また、職工たちが恐れるほど厳しく、品質のためなら採算を度外視するほどの姿勢を貫いていた。美濃随一の名工とされる由縁である。 (立花昭・近代国際陶磁研究会員)

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この記事は「中日新聞多治見支局」のご協力を得て掲載しています
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